2013 | 奈良県奈良市 住宅 | 木造 地上2階建 新築 敷地面積 107㎡ 延床面積 64㎡
奈良市内の住宅地に建つ、夫婦と子供一人が住む住宅である。敷地面積が100㎡強で、建蔽率40%、容積率60%、延床面積が最大64m2という法的条件に加え、3方が細い道路及び道路越しの家に囲まれ、南は境界線際まで隣家が迫るという敷地であった。 こうした条件の中で、広がりや開放感の確保をしながら周辺環境のコントロールをいかにして行うかが課題であった。それに対して、1階に個室と水回りのボリュームを3つ分散配置し、その上に大屋根を架けるという構成を試みた。 1階の個室は外部へはしっかり閉じ、内側へ開くことで緩やかな求心性が生まれている。この個室に囲まれた場所は廊下ではなく、階段室上部の開口から陽が十分に入るホールとし、それぞれの部屋の延長として使ったり、外出の準備をしたり、お客さまを迎えたりと第二のリビングのような溜まりができる場所となった。 2階は大屋根を架け、屋根内に15畳のLDKと2つのテラス、それにいくつかの外部空間を内包している。ずれたボリュームに対して掛けられた屋根により、「過剰な軒下」といえる特殊な外部空間を生み、内部からの広がりを持たせている。この軒下を介して足元に庭や道が見え、大屋根に沿って斜めに繋がるという街への特殊な開き方を試みている。 密集した住宅街の中で視線をコントロールしながら開放感を獲得すると共に、大屋根の下で得られる程よい閉鎖感、安心感を感じられる空間となった。
*「第5回建築コンクール」古谷誠章賞受賞*「Casa BRUTUS vol.179」2015年2月号掲載 *「LIVES vol.79」2015年2月号掲載 *「Jutaku: Japanese Houses」(PHAIDON.イギリス)掲載 *「WINZIG」(DVA.ドイツ)掲載
Photo : KAI NAKAMURA